今日、5月10日から高齢者向けのコロナのワクチン接種の予約が始まる自治体が多く、そのためにたくさん電話がかけられるため、電話会社が通信制限をするというのがニュースになっています。
通信各社、10日から通話制限=コロナワクチン接種予約で―ネット利用呼び掛け(時事通信)
NTTなど通信大手各社は9日、10日朝から新型コロナウイルスワクチンの接種予約を受け付ける自治体の予約用番号への通話を制限すると発表した。つながらない場合は時間を置いてかけ直すか、インターネット予約を受け付けている自治体についてはネット利用を呼び掛けている。
NTT東日本の管内で約100、NTT西日本の管内で約100の自治体が10日に予約を受け付けるという。通話制限は通信設備の容量を確保し、警察や消防といった緊急通報などへの影響を避けるための措置だが、予約をめぐり混乱が発生する可能性もある。
これに対して、ネット上では、
高齢者にはネットでの予約は難しい
といった声が多く聞かれます。
「高齢者はネットに弱い」というのは、これまでの伝統的な価値観だと思いますが、本当にそうなのでしょうか。少々考えてみたいと思います。
高齢者とは
法律や各種の制度では、「高齢者」というと65歳以上を想定していることがほとんどです。
65歳~75歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と分けています。
ただ、一般的な感覚だと、60代で高齢者というのも違和感があるかもしれません。
会社の定年は65歳になっていますので、65歳までは働いている人が多く、70歳まではまだまだ元気な人が多いと思います。
自動車の免許更新に際して、「高齢者講習」が義務付けられるのが70歳以上であることから分かるとおり、社会一般的には、「70歳以上が高齢者」という感覚ではないかと思います。
ということで、この記事では、高齢者=70歳以上、ということで考えていきたいと思います。
高齢者とインターネット
では本題です。
高齢者はネットが苦手でしょうか。
私は、必ずしもそんなことはないと思います。
統計データを見てみましょう。
高齢者のインターネット利用率
2019年(令和元年)9月末の状況を総務省が調査した「令和元年通信利用動向調査」によれば、高齢者のインターネット利用率(利用したことがある)は、以下のようになっています。
70~74歳 | 81.0% |
75~79歳 | 76.7% |
80歳以上 | 75.8% |
想像よりも高いのではないでしょうか。
ただ、「過去1年に1回は利用したことがある」という条件なので、日ごろから利用しているということになるともう少し割合は低いかもしれません。
でも、同じ調査の中で、「自宅でインターネット回線を契約していない」という項目がありますが、その割合は、上記の利用率の逆の数字とそれほどかけ離れていないので、環境は整っていると言えます。
高齢者がインターネットにアクセスする端末
同じ総務省「令和元年通信利用動向調査」では、「インターネットの利用機器」も調べています。
これをまとめると以下のようになります。インターネットを利用している人の中の割合です。
パソコン | スマートフォン | |
70~74歳 | 66.8% | 62.0% |
75~79歳 | 56.4% | 45.7% |
80歳以上 | 45.3% | 40.8% |
高齢者は、パソコンでの利用が多いですね。ほかには、タブレットも2割弱いるようです。
20~40代まではだいたいパソコンが8割、スマホが9割なので、逆転しています。
高齢者はインターネットが苦手か
結論的には、一概には言えないのではないかと思います。
7割以上の高齢者がインターネットに触れていて、パソコンやスマホを使っているということです。
そして、いま70代の人たちは、それなりに仕事でもパソコンやインターネットを使っていたことが多くなってきた世代です。
総務省の「通信利用動向調査」の2000年(平成12年)版を見ると、以下のような記述があります。
- インターネットの利用率は約9割。従業者規模による格差は縮小
- 従業員数100人以上の企業の約90%がインターネットを利用。うち、約半数が全社的に利用
- 利用率の上昇とともに、従業員規模による利用格差も解消の方向
- 約9割の企業が電子メールを利用、社内外で電子メールを利用する企業が増加
- 従業員数100人以上の企業の78.2%が社内外で、10.0%が自社内のみで電子メールを利用。計88.2%の企業が電子メールを利用
- 社内外で電子メールを利用する企業が前年から17ポイント増加
20年前のことですから、いまの70代の人たちが50代だった頃のことです。
新しいことを吸収するのは難しかったかもしれませんが、全く使わなかった人はほとんどいないでしょうし、ネットの便利さも分かっている世代です。
逆に、いまの80歳以上になると、仕事では使っていなかったという人も多くなりそうなので、状況が違うかもしれません。
ワクチン予約で電話に殺到するのはなぜ
数字的に見ると、高齢者(70歳以上)といっても、必ずしもみんながネットやスマホに弱いというわけではなさそうです。
ではなぜ、みんな電話に殺到してしまうのでしょうか。
たぶん、案内のお手紙がよくないんでしょう。全くの想像ですが。
お手紙を開くと、URLやアクセスの方法が書いてあって、どこをクリックしろとか、数字を打ち込めとか、書いてあるのだと思います。
おそらくその時点で読む気をなくしてしまうような案内で、「こんなの面倒くさいから電話しちゃおう!」という風になっているものと思われます。(違ったらごめんなさい。)
案内にはいろいろ書かないで、とにかくアクセスしてもらえればいいような形にした方がいいですよね。
アクセスさえしてもらえば、AIのチャットボットとか使えば、そこから先は難しくないように思います。
【新型コロナワクチン:5月10日予約受付状況】
本日の予約受付状況をお知らせします。
予約状況:5月10日午後5時現在 13,770人(80歳以上の49.2%、80歳以上も含む65歳以上全体の16.2%)
予約受付種別ごとの受付件数:電話予約1,360人 オンライン予約12,410人https://t.co/QfxBhaGD4n— 福島市 (@fukushimacity) May 10, 2021
これによると、受け付けた件数の内訳は、電話1360人、オンライン12410人で、全体の90%がオンラインでの受付です。
家族が手伝ったりというのもあると思いますが、オンラインがきちんと機能すればスムーズにいくことが分かります。