先日、報道で政府・東京都が保有している東京メトロ株式の売却と地下鉄の延伸計画に関して近く国土交通省の審議会の委員会が答申するということが出ていました。
地下鉄の延伸計画が進むのは東京メトロ副都心線以来のことなので、大きなトピックです。どのような計画なのかを見てみましょう。
交通政策審議会答申
首都圏の鉄道網に関しては、国土交通省に設置された交通政策審議会というところで審議されて整備が進められています。
民間の鉄道会社の計画も、基本的には交通政策審議会での審議にかかります。なぜ、民間の鉄道会社のものまで政府で審議するかというと、鉄道は公共的な事業で、鉄道事業法という法律で監督していることや、建設に莫大な資金が必要で、税金や政府系金融機関からの融資で補助されるからです。
東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(2016年)
直近で交通政策審議会が答申を出したのは、平成28年(2016年)です。答申のタイトルは、「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」ですが、俗に「198号答申」と呼ぶことが多いと思います。
この28年答申では「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」として、以下の計画について議論された結果が示されています。
- 都心直結線の新設(押上~新東京~泉岳寺)
- 羽田空港アクセス線の新設(田町駅付近・大井町駅付近・東京テレポート~東京貨物ターミナル付近~羽田空港)及び京葉線・りんかい線相互直通運転化(新木場)
- 新空港線の新設(矢口渡~蒲田~京急蒲田~大鳥居)
- 京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設
- 常磐新線の延伸(秋葉原~東京(新東京))
- 都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備(臨海部~銀座~東京)
- 東京8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉)
- 都心部・品川地下鉄構想の新設(白金高輪~品川)
このうち、羽田空港アクセス線の新設は、JR東日本が国土交通省に事業計画を申請し許可されて動き出しています。京葉線・りんかい線相互直通運転化も議論は相当に進んでしまいます。
今回、審議会の委員会が答申することになるのは、7の東京8号線(有楽町線)の延伸と8の都心部・品川地下鉄構想の新設ということのようです。
具体的にどのような計画か見てみましょう。
東京8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉)
東京8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉)は、現在、新木場まで通っている東京メトロ有楽町線の豊洲から半蔵門線の住吉まで延ばすという計画です。昭和47年(1972年)に初めて計画が出され、昭和57年には当時の営団地下鉄(東京メトロ)から免許申請もなされました。ところが、政府の許可が下りず、平成16年(2004年)に営団地下鉄が民営化されると、新線建設を行わない方針となったため、計画がストップしています。
東京8号線のルート
計画されている東京8号線のルートは、こんな感じです。
- 豊洲を新木場方面に出たところで分岐
- JRの潮見方面へ北上
- 東陽町で東西線と接続
- そのまま北上して住吉へ
都心部・品川地下鉄構想の新設
都心部・品川地下鉄構想の新設は、白金高輪で東京メトロ南北線・都営三田線から分岐して南東へ向かい、品川を目指す路線です。
なぜ、いまになってこの路線が計画されているかというと、リニア中央新幹線の始発が品川になるからです。品川は、ターミナル駅ではありますが、JRと京急しか通ってなくて意外にアクセスが悪いんですよね。白金高輪は、南北線と三田線が通っていますから、地下鉄からのアクセスがよくなるというものです。
東京メトロが方針転換するかがカギ
先にも書きましたが、どちらか、あるいは両方の計画を進めることになれば、副都心線以来の新線建設ということになります。
東京メトロは、今後新線の建設はしないということを基本方針としてきましたので、計画を進めるには、この方針の転換が必要です。
今回の審議会の委員会の答申では、新線計画のほかに、株式売却・上場についても進めるようにという内容になるそうです。
より民間会社の色彩が強まれば、多額に自己負担して新線建設に向くのは無理があるので、これまで以上の何らかの財政措置とセットということになるのかもしれません。
この7月中にも答申が出るようなので、注目していきたいと思います。