当時社会を震撼させたルーシー・ブラックマンさん事件。その事件に関わった刑事を描いた大作です。
著者の高尾昌司氏は聞いたことがなかったのですが、楽天ブックスで見てみたら、この本だけしか出てきませんでした。プロフィールによると、週刊誌の記者さんが長かったようです。
さて、本の印象がどうかというと、読んでいる最中と読み終わってからでかなり変わります。
読んでいる最中も途中でガラッと変わりました。
途中までは、ルーシー・ブラックマンさん事件の捜査の関係者の息づかいが分かるようなタッチで繊細・詳細に描かれていて、引き込まれていく感覚がありました。
けれど、ルーシーさんの遺体が見つかった後、普通なら2~3ページで終わるような内容が延々と続き、最後がダラダラしたような感じを覚えました。
なので、読後感は「ダラダラだったな」となるところだったのですが、改めて本書の書名を見ると「刑事たちの挽歌」とあります。
本書は、事件解明・原因究明が本筋ではなく、それに関わった刑事たちの人間模様を描く本だったと気が付き、そう考えると、ああ、そういうことなんだなと納得しました。
お遍路シーンでの一言一言は心に染み入るものがあるし、事件後もルーシーさんの遺体発見現場を毎年訪れて供養の線香をあげる刑事たちの姿には感動してしまいます。
事件のことだけならほかにも本が出ているのでそれを読めばいいと思います。
(例えば、黒い迷宮 上 ルーシー・ブラックマン事件の真実 (ハヤカワ文庫NF) [ リチャード・ロイド・パリー ]など)
本書は、その背後の人間模様を描いたものだと考えると、過不足ない作品だと思います。