ヤフーニュースに朝日新聞からの配信でこのような記事が出ていました。
相続人なき遺産、647億円が国庫入り 21年度過去最高(1/23(月) 7:00配信)
遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことがわかった。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えた。専門家は早めに遺言書をつくるよう勧めている。
最高裁判所によると、相続人不存在による相続財産の収入は、21年度は前年度比7・8%増の647億459万円だった。01年度は約107億円、11年度は約332億円で、この20年で6倍に増えたことになる。
相続人も遺言もない遺産は、利害関係者の申し立てにより、家庭裁判所に選任された「相続財産管理人」が整理する。未払いの税金や公共料金などを清算し、相続人が本当にいないかを確認。一緒に暮らしたり身の回りの世話をしたりした「特別縁故者」がいれば家裁の判断などにもとづいて財産を分与し、残りは国庫に入る。
ヤフーニュースだとこれで終わりなので「ふ~ん、高齢化社会だからそうだろうなー」という感想を抱いただけでした。
少し興味があったので、朝日新聞の元記事を読んでみました。
もっと話を展開しています。
遺産20億円はどこへ 「おひとり様」大地主、未完の遺言とその末路
この記事がひどかった。
身寄りのない高齢者が亡くなると、裁判所が相続財産管理人を選任して財産の整理・処分を行うことになり、法的に有効な遺言がないと故人の意向に沿うことができない可能性がある。だから、遺言をちゃんと書いておくことが重要。
こういった内容を伝えたい記事だと思います。この趣旨は時代にマッチしたよいものだと思ったんですが、随所に、朝日特有の反役所的な文章が出てきます。
事例として紹介されている盛岡市の資産家については、生前に役所嫌いなことを発言していたことを取り上げて、財産の大半が国庫に入ったことがさも悪いことのように表現。全体的に、国庫に入ることが悪いことのような書き方です。
一方で朝日新聞は、資本主義経済の結果として出現した富裕層に批判的な論調が日ごろから多いので、考えが一貫していないように感じます。朝日的に言えば、資産家が資産を都合のいいように相続させることは、経済的な階層の固定につながるので、非難の対象とすべきように思います。
極めつけは、上野千鶴子氏へのインタビューです。
上野氏は、
国に財産を取られないように遺言を書いている。
国に取られて防衛費に使われるようなことを考えたら、遺言をちゃんと書こうと思うよね。
といったことを言っています。まさかここで防衛費のことが出てくるとは思いませんでした。
朝日新聞や主な購読層であるリベラル系の人たちが、昨今の防衛費増額の議論で反対論陣を張っているのは分かっています。ニャンコ編集長も、防衛費増額やそのための増税議論には、もろ手を挙げて賛成というものではありません。
でもですね、それとこれとは全く別のことでしょ。
自分で築いた資産をなるべく最後まで自分の意思(遺志)で使いたいなら、遺言をしっかり書きましょう、というのはすごく共感できるし、実務的にも大事なことです。でも、国に資産を取られてはいけないので遺言書きましょう、っておかしいと思います。まして、防衛費に使われたくないからなんて、誰が共感できるんでしょうか。
仮にそうした議論が成り立つとしても、防衛費については、いま、2023年度の国の予算案では、一般会計全体の約115兆円のうち約7兆円の5%強でしかなく、国の予算の大部分は、社会保障費と国債の償還です。
「国に取られる」といった論調で記事を書いた記者や上野氏は、社会保障に使われるのも拒否したいんでしょうか。そうだとしたら、それは、朝日新聞が最も忌み嫌うネオコン・自己責任論を主張するのと同じような気がします。
自分の資産が自分の思うようにしたい、社会保障費になって弱者支援のために使われなくない、というのと同じです。
ニャンコ編集長は、いわゆるリベラル系の人たちの考え方に近く、産経新聞の記事とかを見ていると虫唾が走るし、自民党が嫌いだし、安倍晋三は大っ嫌いだったし、多様性の尊重や弱者の支援は大事だと思っている、典型的・模範的な朝日新聞購読層と自認しています。
でも、そんなニャンコ編集長でも、今回の記事の作りは疑問に思いましたし、若干の嫌悪感を覚えました。
右寄りの人たちは、従軍慰安婦報道などの経緯から朝日新聞はおかしいといつも声高に叫んでいますが、この記事を見ると、いよいよ私でも朝日新聞はおかしくなってきてしまったのではないかと思ってしまいました。
正常化しないとニャンコ編集長のような模範的購読者も離れていくというヤバいことになりますよ。