講談社現代新書の『左翼の逆襲 社会破壊に屈しないための経済学』を読みました。
私はどちらかというと社会民主主義にシンパシーを感じることが多い思想傾向なので、タイトルだけ見て買ってすんなり読めるかと思ったのですが、なかなか読み進めるのが難しかったです。
というのも、この本の全体を貫いているのは、いまの自民党菅政権とそれをバックで支えている「支配層」の大方針がけしからん、というもので、あまりに真正面から菅政権の批判をしているので、経済の本というよりも政治の本を読んでいるような感覚になってしまうからです。
その点、「おわりに」を読んで納得しました。この本は大阪労働大学での話をベースにしたものと書いてありました。この情報はできれば「はじめに」で触れておいてほしかったです。
いくつか共感できたことと、ためになったことを紹介します。
まじめに仕事をしてきた人をゾンビ呼ばわり(p.104)
昔から地域の需要に応えて庶民向けに採算割れでも生き長らえてきた事業を「ゾンビ」といって淘汰させようという政策には確かに違和感を覚えるところです。こういうこと言う新自由主義者って嫌ですよね。
企業か政府への信用創造がおカネを作る(p.194)
この章では、民間銀行の信用創造を中心に話が進みます。信用創造の仕組みは、経済学の本の解説などでは難しいのですが、比較的分かりやすく説明されています。
税金は財源ではなくてインフレ抑制が役目(p.212)
税金とは課税先で労働を浮かせるためにある(p.223)
国家の徴税の役割、機能についても、やや細かく説明されています。税は、義務教育あたりでは、行政サービスの財源とか富の再分配といったことがメインで教えられているのではないでしょうか。でも、それらよりも大きな機能は、社会の行動様式を変えるというか、政策誘導の手段です。こうしたことも分かりやすく説明されています。
全体として、平易な分掌で分かりやすいので、もう少し党派性の薄い表現だともっと読みやすかったのではないかと思いました。